• 第1弾 加藤いつこ
  • 第2弾 三遊亭歌之介
  • 第3弾 星田英利
  • 第4弾 小市慢太郎
  • 第5弾 柳 美里

vol.3

星田英利さん写真

星田英利

目指したのは、「クール・ランニング」

―――現在、編集中の『カカラケ』。今、撮影を終え、ご出演された感想をお聞かせください。
星田 今回出演した『案山子とラケット』は、僕自身は映画『クール・ランニング』を目指したんです。あの映画はジャマイカのボブスレー・チームが冬季オリンピックに挑むというストーリーなのですが、ボブスレーの競技者だけの話ではないんですよね。マイノリティーの方々が奮闘し、その上で、競技を知らない人たちの共感も読んでヒットした映画ですよ。
 今回のカカラケも、僕的な考えでは、『クール・ランニング』と同じだと思いました。ソフトテニスの愛好者だけに観ていただくのではなく、一番は競技を知らない人に、いかに観ていただくか。そこが一番大事でなんじゃないのかなと。ソフトテニスの広報ビデオではなく、やはり一つの物語ですから。
 僕は、観ている人の心にセリフが一番に残ってしまうっていうのはどうも好きではない。リアリティーのないセリフは嫌い。だから、そのためにはセリフをそぎ落としたりとかも必要ではないかと。今回の映画でも競技者ではない人たちにもメッセージを伝えるためには、やはりリアルな演技だったり、セリフだったりが重要じゃないかと思って。それを目指したかったんですよね。
 現在、映画の方は最後の仕上げに入っているそうですが、どのように料理されているのか、期待しています。 それと、技術や裏方さんたちの力もとても感じました。いろいろと変更の多いなか、寝ずに対応してくれた。本当につくづく製作スタッフの皆さんの存在の大きさを感じさせられましたね。

星田英利さん

――主役でもある亜季ちゃん(平祐奈さん)、珠子ちゃん(大友恋花さん)とも共演シーンは多いですよね。
星田 亜季ちゃんと珠ちゃんはとにかく一生懸命な女優さんでした。芯が強くて頑張り屋。これから先の長い二人にとっても、この映画がキラキラのアイドル映画になってはいけないんじゃないかなって思いました。いいところだけを見せるのではなく、物語ではあるけれどリアルなストーリーでなければと。二人のためにも、周りの僕らも心して臨んだつもりです。

情熱を傾ける皆さんがうらやましい

――星田さんご自身は中学校でソフトテニス部に入部されたそうですね。
星田 僕は中学からソフトテニスを始めて中学の3年間でソフトテニス歴は終わりました。もともと少年野球をやっていたのですが、中学に入って野球部は厳しすぎそうで、じゃあと打つ系の部はと考えたところ…、正直、“野球以下、卓球以上”ということで、ソフトテニス部に入部したんですよ。
 中3のとき地区大会で優勝したペアとは、あまり仲がいいわけでもなかったですね。プライベートでよく遊ぶわけでもないし、学校の廊下で会っても話もしない感じでした。なんというか、不条理というか。漫才でも相方ってそんな感じですけどね。
 でも、中学時代は全般的に伸び伸びやっていましたね。実は僕らが1年のとき、クソ弱い3年生に「直立不動でいろ」とか「水飲むな」とか言われたことがあったんですよ。でも、「1年、声出せ!」って言われて、実際に1年が声を出したって、3年がパワーアップするわけないでしょ。だから、僕らが中3のときに、そういうことは一切排除しましたよ。

――進学した上宮高校はソフトテニスの強豪校ですよね。
星田 (上宮)高校に入って、あの中庭でプレーしている人たちを見たときに、ボールの音、レベルを見て、全然違うと思いました。僕は前衛だったのですが、ボレーの打球が別物だった。甘い練習をしてきたし、こんなに本格的にはやっていけない、ムリだなと。ここで努力しても一番にはなれないと痛感し、入部は断念しました。
 そんな途中でラケット投げた人間が大きなことは言えないのですが…。今、もし「ソフトテニスは地味な競技だからやめようか」なんて考えている人がいたら、「地味でも、もう1回やってみよう」って考え直してほしいですね。
 何のスポーツでも同じだと思いますけど、僕自身、勝っても負けても涙が出たことがない。でも、皆さんは勝って泣いて、負けて悔し涙を流して…そういう一心に情熱を傾ける競技に出合った皆さんがうらやましいですよ。

いまはチャンス、ソフトテニスに胸を張ろう

――ソフトテニスのさらなる発展を遂げるためには、どうしたらよいでしょうか?
星田 だから、皆さんはすごいことしているんですよ。ソフトテニスの愛好者の皆さんだって。日本一だってすごいこと。ソフトテニス界のレジェンドだっているでしょ。そういう事実があっても、テレビのニュースや新聞にも載らない。悔しくないですか。おかしいですよ。
 もっともっとプレーをしている皆さんの熱を溶岩のようにどんどん噴火させたらいいのではないでしょうか。たとえば、今、プロテニス・プレーヤーの錦織圭選手がすごい結果残しているでしょ。でも、よく聞けば、錦織選手が全米2位になったのが、清水善三さん以来90年ぶりとか。でも、その清水さんというのは軟式をやっていた人で、打ち方も軟式打ちだったそうやないですか。それに、今後は二刀流でいく選手がいてもいいだろうし、軟式、硬式両方やった上で、「僕はソフトテニスの方がいい」って思う選手もいるだろうし。二刀流でもOKだったりとかね。

 とにかく、今はチャンス。広報的戦術として、錦織選手に便乗する。いいタイミングでスッと表に出るとかね。いやいやケンカ売ってほしいぐらいですよ。あえて「対硬式」で、“ライバル宣言”しちゃうとかね。地方競馬から中央競馬へ挑戦するみたいに。
 いつも一歩引いてって感じじゃなくて、いいと思います。「そこまでソフトでどうする!そこはハードにいこうや」ってね。
 カットサービスとか、硬式はようせんでしょ。サービスがはねない感じとか、変化球とか…そういうのをショー的に見せるとかね。とにかくソフトテニスの価値を高めて勝負していく。考えていくと、いろいろな広報戦術、出てきそうじゃないですか!

星田英利さんのお話

 ラケットを握り、あのゴムボールを打った感触、そして音を知っている星田さん。独特の感性から繰り出される星田節は、クールさと温かさが共存するものだった。
Text by ソフトテニスマガジン編集部
Photo BY Hideo Ishibashi 石橋英生
三遊亭歌之介さん
星田英利Hoshida Hidetoshi
大阪府出身。貝掛中→上宮高。小学校時代は少年野球に親しみ、中学校に入り、ソフトテニス部へ。3年時には阪南地区優勝を果たす。高校ではソフトテニス部には入部せず。芸人としてはR-1グランプリ優勝。近年は俳優としても活躍し、NHK朝ドラ「カーネーション」ほか、多数のテレビドラマ、映画、舞台などにも出演。